03 騎士の憂鬱

「やっと前の乱闘騒ぎの書類始末したと思ったらまた暴動!?」
少女と青年は、狭い路地を駆け抜けていた。
酒場への最短距離は、多少手間取るがこの狭い道を通っていくしかない。
それに、あの『酒場』での乱闘だ。
少女は、無意識に舌打ちした。
「もっとスピード上げるよ!『酒場』で乱闘っていったら『あの人』以外いないんだから!」
「…確かにな。さっさと行かないとまたえらい目にあうぞ、これは」
そういって、二人はスピードを上げた。




サクリーフが酒場に着いた時には既に、数人の野次馬が集まっていた。
だが、すぐに様子が変だということに気付く。
普通、野次馬はもっと熱気に溢れているか、興味なさげに静観しているかのどちらかだとサクリーフは思っていた。
しかし、この街の住民は様子が違った。
何故か、異様なまでに怯えている。
それは、尋常ではないほどだ。
彼らの顔は既に青ざめているし、
中には震えている者もいる。
「…なんだ?この感じは…?」
そして、サクリーフはあるひとつのことに気付く。
酒場の中から、人とは根本的に違う『何か』の気配がする。
常人とは違い、聖騎士の特殊な訓練を受けているからこそ気付くことができた奇妙な違和感が、そこにはある。

何かおかしい―――

そう思ったときだった。
「てめえ、いい加減にしやがれ!言ってることの意味がわからねえのか!?」
酒場の中から、叫び声が聞こえた。
低い男の声だった。
「……るさい」
そして、もうひとつ。
ボーイソプラノのように高いトーンの少年の声。
「ああっ?何だってんだ?」
低い声の男がいらだっているのが分かる。
今にも殴りかかりそうな雰囲気だ。

これはやばい―――

そう思って、思わず身を乗り出したとき。

「うるさいっていってんだよ!この豚がっ!」

少年が、吼えた。
そして、爆発が起こった。


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